今回はすこし堅いお話。

2.14に大手電機メーカー東芝の綱川智社長の記者会見でアメリカでの原子力事業での損失の額が約7000億円が明るみに。

 収益性の高い、儲かる事業と踏んで10年の年月と数千億円の巨額な投資を行いつづけ、2030年までに世界で45基の原子炉を建設することを公言していた。めざすは世界最大の原子力発電所建設企業。

しかし、膨らむ資材のコスト、工期の遅れによる人件費の増幅という根本的な問題を解決をできなことで、結果は会社存亡の危機に直面してしまった。

 東芝の現状

伝家の宝刀である白物家電で世界の東芝となった、そんな東芝の現在稼ぎの主軸となる半導体事業。

その稼ぎ頭を分社化し国内、外のファンドや企業からの出資を受け入れるという状態にまで踏み切るということは、死活状態を意味している。

 いわば切り売りである。

そこで思うのが、なぜそこまでしてでも原子力事業を手放さないのか?という疑問である。

 東芝の損益データー

大企業ならではのジレンマ

記憶に新しい、2011年の東日本大震災。
 福島第一原子力発電所で起きたメルトダウンにより、国内の原子力業界は規模の縮小を迫られ、原子力事業も多大な影響は不可避になりました。

 その事故は、国内のみならず海外にも警鐘を鳴らし、原発の安全基準自体をさらに厳しい方向へとたどったのです。

日本が原子力事業をおこなううえで無視できない協定=日米原子力協定があります。
アメリカと1988年に結んだこの協定は、アメリカとのあいだで原子力の技術協力を約束したものですが同時にこれは、世界の非核、核不拡散の世論のなか日本が原子力施設をもつことを商業面にかぎり許されることでもあります。

東芝が国内のみならず、世界規模で原子力ビジネスをおこなうというスケールをもつ企業である以上、イチ会社としてのイチ判断では済まされないのであります。

来年7月に期限が迫っている

アメリカとのあいだで締結された日米原子力協定。
その協定の契約期間がせまっており、その契約が更新できるかが日本の原子力事業の運命を左右しているのであります。

アメリカにおいて原子力事業を手がける東芝の子会社ウェスチングハウス(WH)。
今回の巨額の負債を生んだともいわれるこの会社を、いまこのタイミングで東芝がもういらないと手放すことはアメリカにマイナスの印象を与えます。

 イチ会社として手放したくても、手放してアメリカの機嫌を損ない日米原子力協定を更新できないという事態になると日本はもう原発を動かすことができなくなってしまうという事態になるのです。

東芝がアメリカの原子力事業を撤退する=日米原子力協定の更新に多大な負の効果=日本事態が原子力施設をもてない可能性

という背景があります。

日本とアメリカの原子力協定

日本の経産省

東芝が民間企業とはいえ、その一挙手一投足は日本の省庁にも無関係ではありません。

原子力事業政策を所管しているのが経産省です。
東芝は経産省の意向も汲み取らなければなりません。

踏ん張ってくれ東芝 というのが経産省の本音ではないでしょうか。

サウスカロライナ州で2基とジョージア州で2基の既存の原子力発電所の拡張するプロジェクトを行っている以上、損害が膨らんでもじゃあもういらないはカンタンにできないのである。

 東芝のアメリカ原子力ビジネス

東芝にみる日本の世界的企業の苦悩

今回の東芝の苦悩は、東芝のみにかぎったことではないのです。
トヨタやシャープ、ソニーなど確たる世界のブランドを築き上げた日本企業たちが包括している問題なのです。

そもそもの伝家の宝刀である家電製品や電子部門、部品メーカーといったメインの稼ぎ頭ともいえる事業が、世の中のめまぐしい競争激化と日進月歩の技術発展によりおびやかされているのです。

シャープが台湾の企業のグループ傘下にはいったのもひとつの例です。

 台湾企業によるシャープ買収

他の部門の損失もいままでは主軸の部門の収益でまかなえていたからこそ、企業として各方面へのチャレンジといった成長チャンスもあった訳ですが、主軸部門すらがおびやかされてきている世界情勢。

日本の大手企業たちは新たなるビジネスチャンスにたいして戦々恐々と見守るしかなくなってきているのです。

東芝の改革